平成二十八年弥生——
藤原遙<ふじわらはるか>、年齢不詳、見た目年齢十六歳。年代不詳の和鏡に宿る『神』である。
数百年ぶりに目覚めたが、『神』の存在を司る『神力』が乏しく、願い事を叶えることができずに困っていた。
全国八百万『神』の管理・統括を担う『出雲御社』の規定で、月三個の願いを叶えると『神力』の配給を受けることができるのだが、弱った『神力』の遙にはそれさえままならない。
ある日、弱り切った遙は、町外れの鎮守の森に祀られている『神』を訪ねる。『神力』を分けてもらうことができないか、と思ったわけだが、そこには遙の予想外の『神』が眠っていて……
登場人物
藤原遙 <ふじわら・はるか>
年代不詳の和鏡に宿る『神』。見た目年齢十六歳。好物は肉まんと酒。モカベージュのゆるふわボブにくりっとした瞳が印象的な少女。『神力』を使うとき、瞳が碧に光る。守人・藤原春文が亡くなってから、『人』の世に紛れ、働き、自分で自分を祀っている。
藤原春文 <ふじわら・はるふみ>
遙を讃え祀った最後の守人<もりびと>。一年前に亡くなった。享年八十四歳。生前は変わり者で、ダム・ぜんざい・浜唄子をこよなく愛す。『神』である遙には優しく、勤勉な守人だった。
リエコ
野孤<やこ>の化身。遥が務める和菓子屋『白吉屋』の女将。あっけらかんとしていて、遥とは仲がいい。怒ると尻尾が現れる。
蔵田天太 <くらた・あまた>
松津信用金庫に勤める青年。遙の恋人。
黒正 <くろまさ>
町外れの鎮守の森に眠っていた『神』。団子が好物。食えぬ性格で、朱色の組紐を巻いた黒漆太刀を携えている。